今日から君は自宅警備員〜フクロウ日記〜

猛禽類(フクロウが主)についてつらつら書きます

フクロウの食事 餌の栄養成分の比較 ひよこ うずら マウス ちょっとコオロギ

常に繰り広げられるフクロウの食事についての論争
主に3種類(ひよこ うずら マウス)が主流であるが、どれを使用するか、どんなメリット・デメリットがあるか、人それぞれ意見や考え方が違う
今回は、論文を読み色々考えていきたいと思う


フクロウ飼育者界隈で、知る人ぞ知る論文


こちらの論文、2002年アメリカの動物園で、肉食動物に与えている餌の成分を調べまとめている
文章を読まなくとも、栄養成分の表を見ることで色々見えてくるだろう
非常に見にくいので、少しわかりやすくまとめてみた(図1、2、3を改良)
これらは骨も内臓も全て含めた栄養成分である



タンパク質、脂質、灰分、総エネルギーについてまとめた表である
マウスはサイズによって違うが、一番高い値を記載することにする



protein(タンパク質)
マウス70.3% うずら71.5% ひよこ64.9%
うずらが一番タンパク質量が多い


fat(脂質)
マウス30.1% うずら31.9% ひよこ22.4%
一般的にマウスが一番脂質が高いと言われるが、うずらの方が高めである


Ash(灰質)
いわゆるミネラルであり、カルシウム、鉄、ナトリウムなどが含まれる
マウス12.9% うずら9.9% ひよこ6.4%
こちら、マウスが全てのサイズにおいて、ひよこうずらを超えた%を示していることがわかる


総エネルギー 
マウス6.65kcal うずら6.79kcal ひよこ5.80kcal



ビタミンA ビタミンEについてまとめた表


ビタミンとは
人体の機能を正常に保つため必要な有機化合物
脂溶性ビタミンはA、D、E、Kの4種類
水溶性はB1、B2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、Cの9種類
脂溶性は体に蓄積しやすく、過剰摂取すると腎臓肝臓などの内臓障害になる可能性があるので注意すること
水溶性のものは一般的に尿とともに排泄するから採りすぎても問題ない


ビタミンA マウス578272 うずら70294 
脂溶性ビタミン 目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする


ビタミンE マウス173.9 うずら66.8
強い抗酸化性作用があり、生体膜の機能を正常に保つことや、赤血球の溶血の防止、生殖を正常に保つことに関与






さまざまなミネラルについてまとめた表


ミネラルとは
5大栄養素の1つ(タンパク質 脂質 炭水化物 ビタミン ミネラル)
以下の元素がヒトにとっての必須ミネラルである。
ホウ素 ナトリウム マグネシウム ケイ素 リン 硫黄 塩素 カリウム
カルシウム クロム マンガン 鉄 コバルト  銅 亜鉛 セレン モリブデン ヨウ素



カルシウム 
マウス4.05% うずら3.43% ひよこ1.69%
骨格の形成、筋肉の収縮に関与


リン 
マウス1.72% うずらNA  ひよこ1.22%
カルシウムとともに骨格形成、エネルギー代謝に関与


マグネシウム 
マウス0.16% うずら0.06% ひよこ0.05%
骨の形成、体内の酵素反応、エネルギー産生に関与 


ナトリウム 
マウス0.24% うずらNA  ひよこ0.71% 
体液の浸透圧や酸・塩基平衡を調節、神経や筋肉の興奮伝達に関与


カリウム 
マウスNA  うずらNA  ひよこ0.80%
体液の浸透圧や酸・塩基平衡を調節、神経や筋肉の興奮伝達に関与 腎臓病の場合は摂取量の制限が必要


銅 
マウス19.2mg うずら2.6mg ひよこ5.2mg
エネルギー生成や鉄代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などに関与
人の場合、妊娠時や授乳時に必要量が増加する


鉄 
マウス200mg うずら74.9mg ひよこ119.5mg
ヘモグロビンや各酵素を構成する 人の場合妊娠時必要になる


亜鉛 
マウス98mg うずら53mg ひよこ97.4mg
各種酵素を構成し、遺伝子の複製などに関与


マグネシウム 
マウス13.1mg うずら6.4mg ひよこ3.9mg 
カルシウムやリンと共に骨を作っている


ビタミンやミネラルはマウスに多いことがわかった
脂質とエネルギーはうずらよりもマウスの方が低い(うずらの卵や頭など除いた値ではないので注意)
マウスにおいては、サイズの違いで栄養素の含有量も変わってくるのでこの表をみながら考えて与えると良いかも知れない
ここで私は、カリウムはひよこに多いことに驚いた
カリウムを取りすぎると、腎機能が低下するといわれている
尿酸値がひよこ食だと高くなりがちなのは、カリウムの量が多いからなのかもしれない



この表を見て、高栄養のマウスが一番いいなと感じるが、少し落とし穴もある
これらのデータは餌全体の成分量であり、可食部のみの値ではない
マウスでいえば消化器を除き、うずらは消化器や卵、頭、その他臓器をとり、
ひよこは黄身や消化器を抜く(それぞれ丸々あげている人もいる)
可食部だけで再調査したら今回示されたものと、栄養素の含有量が変わってくる可能性がある
雌雄でも成分が変わってくるのではないかと思う
また、2002年のデータであるところも少し引っかかってる
約20年経過した今、栄養素の測定機も精度が上がりNAとなっている値もわかるようになっているだろう
結果はあまり変わらないかもしれないが、少しデータが古いように感じる
もしかしたら最新のデータもあるかもしれないので探したい


また、フクロウに必要な栄養素の研究結果が書かれた文献がないか探している
まずはそれらがはっきりしないと、いくら栄養をあげればいいかが見えてこない
カロリーや脂質だけじゃない、ミネラルやビタミンの取りすぎで栄養過多になり内臓機能が低下する可能性もある


同論文をヘビの飼育という観点から説明した記事
オーストラリアに住む獣医師さんが書いたとか


別資料になるが、「猛禽類学」に載っていた図
鳥類、猛禽類の専門書紹介 (鳥類学 猛禽類学) - 今日から君は自宅警備員〜フクロウ日記〜

ここでは注目すべきなのは、飼われているマウスと野ネズミの違いである
野ネズミはかなり脂肪が少ない
カルシウム:リン比率がちょうど良いので、効率的に骨が形成できる
その他ミネラルも、亜鉛を除き全てにおいて優っている
本格的なスーパーフードを作るとしたらしっかりと運動させたネズミ??
野ネズミとマウスでは種も違うとは思うが、、、、



おまけ
月夜野ファームが出しているコオロギの成分比較

昆虫食メインだと栄養は到底追いつかない
おやつとしてあげるべきだろう
月夜野ファーム 乾燥コオロギ フクロウの食事 - 今日から君は自宅警備員〜フクロウ日記〜


(総括)
この研究結果から何を考えるだろうか??
ほとんどの栄養素が多いマウスが一番良いと結論づけることもできるかも知れない
しかし、別の視点でこの論文を見ると、この成分はうずらに多い、ひよこに多い、などそれぞれの食材の利点もあげることができる
また、実際のところフクロウに必要な成分はこれだっていう研究論文をまだ見つけたことがない
フクロウの種類によっても変わってくるだろう
これだけを使っていたら大丈夫という食材は本当にあるの?
今後何を選択するべき??
結局のところ混乱している


獣医師、フクロウショップ、動物園、花鳥園、それぞれ経験則から導いた解答がある
長生きし、状態の良いところを参考に真似すれば良いと言う考えもある
しかし、いろんな場所で質問を続けていても、メインがそれぞれ違うのでさらに混乱する



科学的に証明された絶対の方法が今のところ見つからないので、
自分自身で、自分のフクロウにあった食事内容を見つける必要がある
フクロウによって好みの違いもあるし、体調によっても食事内容は変わることもある
これしかあげないと決めつけるのではなく、柔軟に考えることで、新たな方法が導き出せるのかも知れない
各食材のメリットとデメリットを理解し、各食材を適切な場所で購入し、鮮度を気にし、捌く際は徹底的にリスクを取り除く(食中毒が怖い)
今できることはそれくらいなのかもしれない



食事に関する記事 それぞれの食材のメリットデメリットをまとめたもの
フクロウの食事〜ひよこ うずら マウス それぞれの特徴〜 - 今日から君は自宅警備員〜フクロウ日記〜



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